「天才観測」2 つんく(後編)

天才でない普通の僕が何とかここまでやってこられたのは何かというと、やっぱり諦めなかったということ。勘違い野郎かもしれないし、自分が分からないお馬鹿さんかもしれない。でもこの勘違いの部分は非常に大事で、未来の伸び代でもあるんです」

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「歌詞にもメロディーにも手応えがあって、自信作だったのに売れなかった曲があります。逆に、自分は自信が持てなかったのに売れた曲もあります。また違った角度の曲だと『ミニモニ。ジャンケンぴょん!』なんかは、『面白いと感じるのは俺だけじゃないかな』と思っていたぐらいでした。手応えと、世間でヒットするかどうかは別です。ヒットを飛ばせたのは数をこなした結果でもあり、作っているうちに上達もしました。シャ乱Qの『ズルい女』『いいわけ』やモーニング娘の『LOVEマシーン』はこれが売れなかったら俺はもう意味がないという気持ちで取り組んだ曲でちゃんと売れてくれたのは本当によかったです。

日本で努力がなかなか報われにくいと感じるのは、日本の独特の気質もあるような気がします

7年ほど前からハワイに住んでいます。行列ができている人気店に行ってみると、時に『あ、これだと日本なら行列店にはならないな』と思うことも少なくない」

 「なぜかというとレジや接客に無駄な時間が多いからで、回転率が悪いんです。しかし、『無駄』と思ってるのは日本で暮らしていたからだと思います。彼らにとってはそれも重要な時間なんでしょう。アメリカで暮らしていて思うのは、日本人はとにかく効率がよく、ミスが少ない。九九の影響か計算も早いですしね。勤勉さなのか、我慢や忍耐なのかは分かりませんけど、日本だと当たり前だと思われている平均値って実は世界的基準で考えたらとても高い。色んなことを多くの人が出来てしまうので、多少の努力でそこから抜け出すのが難しいと感じるのかもしれません。素振り1千回!みたいな感覚ってプロを目指す日本人なら『そりゃそうでしょ!』って思うかもしれませんが、アメリカでは『なんでそこまでするの?』となるでしょうね。逆をいえばすごいやつは最初からすごいわけです」

 ――才能、努力の一言で成功にはつながらないのですね。

 「天才的な才能があれば、正直、芸能界において性格とかはどうでもいいのかもしれません。作品づくりだけを考えたら、性格が悪かろうが遅刻をしようが、本来は関係ないはずなんです。でも現実問題として、芸能界でも成功するには才能以外の要素がとても大事です。特に長続きするためには、長くみんなに可愛がっていただくバランス力がとても大事です」

 「成功のためには才能よりも場数と継続力が重要です。大事なのは『好き』という思い。『好き』は続けられます。『好き』を突き詰めれば『天才』に勝てる、僕はそう思います」(聞き手・加藤勇介)