つづけ読み

  レモン哀歌   高村 光太郎
そんなにもあなたはレモンを待つてゐた
かなしく白くあかるい死の床で
わたしの手からとつた一つのレモンを
あなたのきれいな歯ががりりと噛んだ
トパアズいろの香気が立つ
その数滴の天のものなるレモンの汁は
ぱつとあなたの意識を正常にした
あなたの青く澄んだ眼がかすかに笑ふ
わたしの手を握るあなたの力の健康さよ
あなたの咽喉に嵐はあるが
かういふ命の瀬戸ぎはに
智恵子はもとの智恵子となり
生涯の愛を一瞬にかたむけた
それからひと時
昔山巓でしたやうな深呼吸を一つして
あなたの機関はそれなり止まつた
写真の前に挿した桜の花かげに
すずしく光るレモンを今日も置かう

「100年たったら」「ひだまり」と2冊の絵本を読む。最後に「智恵子抄」所収のレモン哀歌(高村光太郎)を読みながら考えた。

レモンが象徴するものとは何か。

この3編を一つにして、私も読書感想文を書いてみようと思っている。

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                 2023.08.25