からをぬぐって、どんな気持ち?

昨日、詩「から」(宮入黎子)を学習しました。

   から    宮入黎子

ザリガニが
すぽっと からをぬいだんだ
赤い じょうぶな から
着なれたやつ
田んぼのどろの しみたやつ


やわらかい 白い体なんだ
からをぬぐって
どんな気持ちだろう

ぬぎすてるたび
大きくなる ザリガニ
ぼくにも からがあったら
バリバリ ぬぐ
おとなになって どこへでも行く

語り手〈ぼく〉が見かけたザリガニの脱皮🦞

f:id:takehasinayaka:20230922092706j:image

一連の〈ぬいだんだ〉に〈ぼく〉の驚きが読めます。脱皮したことがわかった〈ぼく〉の目線は脱ぎ捨てた殻に向かいます。それは赤くて丈夫でした。〈ぼく〉の心は驚きから好奇心(わくわく)へとシフトして二連へ。

先の殻と見事に対比させた表現。体は柔らかくて白いのです。見た目だけでなく、殻があれば安全、なければ危険という特性も対比の関係です。

〈ぼく〉の目と心は、どんどんと脱皮しているザリガニに近寄っていきます。

知りたい知りたい気持ちからなのか、それとも胸の中にじっとしまっておいた気持ちからなのか、〈からをぬぐって/どんな気持ちだろう〉と考える〈ぼく〉。さあ、いよいよ三連へ。

〈から〉を〈ぬぎすてるたび/大きくなる〉ザリガニに「大きくなっていいなぁ、うらやましいな」という気持ちを抱く〈ぼく〉が語られます。

ラストの3行に

〈ぼくにも からがあったら
バリバリ ぬぐ
おとなになって どこへでも行く〉とあります。

殻は比喩ですから、安全だからこそ窮屈で力を込めないと脱げない何かを〈ぼく〉は身にまとっているのです。ザリガニが〈すぽっと〉自然に殻を脱いだのとは正反対です。

まだ〈おとなになって〉いない〈ぼく〉は自由にどこかに行けないようです。安全でないかもしれないけれど、安全地帯より外に出て自分の可能性を試してみたい気持ちはわかります。

その一方で我が子を危ないめに合わせたくないという親御さんの気持ちもわかります。

どうしたもんじゃろうのうと、読み手も考えます。

うーん、ええっと‥‥。

語り手の〈ぼく〉は小学3.4年生ぐらいでしょうか。年々思春期に入るこどもは低年齢化しているそうです。備えあれば憂いなし。「その時」になってあわてないためにも、日ごろからお子さんとよくコミュニケートしておいた方がいいですよ。

突然の話を受けて、私のようにあたふたしないために。

 

                 2023.09.22