海で生まれ、海に帰る

   海の若者    佐藤春夫

若者は海で生まれた。
風を孕んだ帆の乳房で育つた。
すばらしく巨きくなつた。
或る日 海へ出て
彼は もう 帰らない。
もしかするとあのどつしりした足どりで
海へ大股に歩み込んだのだ。
とり残された者どもは
泣いて小さな墓をたてた。

 

これもあたためてきた詩のひとつ。

中学生と出会えた幸運に感謝。

                2023.08.13